Hereafterその後1

 

 トイマンの攻撃でクラーク、スーパーマンが消えた時私は彼が死んだとは思えなかった。

 ちぎれたケープを手にしても実感はわかず、私は一人で調べ続けた。そして彼がいないと

いう事実が現実となって襲いかかりそうになった時、彼は還ってきた―――。

 

 私たちは目の前の現実に打ちひしがれ、注意力が散漫になっていた。攻撃に気が付いた

時には既に何者かがその攻撃を防いだところであった。

 煙幕が晴れ、現れたその人物にメンバーは喜び湧いた。誰もが彼の帰還を喜び、フラッシ

ュなどは涙すら浮かべていた。「目にゴミが・・・」などと言い訳をしてもその目に光るものは明

らかで微笑ましいだけだ。

 私は喜びを表現することができず、彼から離れた位置に立っていた。態度も愛想の良いも

のではなかったはずだ。しかし彼は気にすることなく普段通りに笑いかけてきた。そのあまり

にいつもと変わらない笑みに、なぜか逆に不安な気持ちがわき起こった。

 これは現実なのだろうか・・・。何よりも願っていた事なだけに自分が本当に現実に踏みとど

まっているのかあやふやに思える。

 だが、彼が帰還した喜びもつかの間、すぐにこの事件の根本的な解決へとメンバーみんな

でとりかかる。そして不安はそのどさくさにまぎれ、明確ではなくなっていた―――。

 

 いつもの面子がそろったメンバーにかかれば、ほどなく事件の全てが片づいた。それぞれ

帰途に着こうとした時、スーパーマンへと視線が集まる。文明社会へ復帰するには少々問題

のある格好だ。メトロポリスのアパートメントに入っていける格好ではない。まだ陽は落ちてお

らず、窓から入るには目立ちすぎる。

 ここで当然のように今度は私へと視線が集まった。

「バットマン。クラークをお願いできるかしら?このままの格好で帰すわけいかないわ。」

肩をすくめながらのWWの台詞に皆一様に大きく頷く。

 当の本人は少し不安そうな瞳で、私を窺っている。こんな視線に囲まれて断れるものがい

たらお目にかかってみたいものだ。

 軽いため息と共に了承の返事をすると、早々にバットウィングを呼び寄せクラークを伴い帰

途についた―――。

 

     *   *   *   *   *

 

 屋敷に着くとすでに暖かな食事が有能な執事によって用意されていた。 

 もちろんいくつ かあるバスルームの浴槽にも湯が満たされているはずだ。客人がどちらを

先にしても良いように万全の支度がなされているはずだ。

 一応客人である、かつてないほど野性味あふるる容貌の男に希望を尋ねてみる。 

「食事と風呂どちらを先に?」

  向こうの世界でよほど良いものを食べていたらしく、太陽をエネルギー源にしているくせに、

漂う食事の香りに少なからず未練がありそう な顔をしたが 

「ありがとう。先にバスルームを使わせてもらってもよいかな?」

自分の姿を眺め、食欲 は後回しにすることにしたらしい。

「もちろんだ。アルフレッドよろしく頼む」

「かしこまりました。ではケント様こちらへ。」

声をかけずとも側に控えていた執事は、すぐにクラークをバスルームへと案内していく。 

 二人が立ち去るとようやく自分も装備を解く。今日という一日は、まだ終わってないが心身

ともに疲労した日だ。私も食事の前にシャワーを 浴びたくなった。幸いこの屋敷にはいくつも

のシャワールームがあるため、一番近くにあるものを使った。

 熱いシャワーを全身に浴びると疲れもいっしょに流れだしていくよう だ。

 今日一日の汗と埃を洗い流すと、スラックスにシャツというラフな格好に着替え、未見の分

のニュ ースをチェックする。

 私たちが関わっていた事件を除いて特に大きな出来事はなかったようだ。チェックはすぐに

終わる。

 そのまましばらく細々とした調べものをしていたが、頃合いを見計らって食堂へと向かった。

 食堂へ入ってゆ くと、すでにクラークは席に着いていた。 

「待たせたか?すまない。」

と謝りつつもクラークの様子に片眉が上がる。

彼は汚れを落とし、服もこざっぱりしたものに着替えているが、あちらに滞在中にのびたら し

い髭と髪がそのままだったからだ。 

「髭は生やしておくことにしたのか?」

単純に不思議に思いそう尋ねると、眉が困ったように寄せられる。

「いや、そういうわけではないんだけど僕の髪や髭はなんていうか、・・・丈夫だろう?」

その言葉にやっと納得がいく。

「普通のはさみやカミソリでは駄目なのか・・・」

「うん。家でも苦労はするんだけどクリプトンの技術でなんとか・・・。」

 確かにこの男の髪やら髭やらを切るのは一苦労だろう。しかし、彼に技術を残した父親も

まさかそんなことで最高レベルの科学技術が役に立つとは思っていなかったに違いない。

「それでは我が家ではどうしようもないな。」

「見苦しくて申し訳ない。」

「それはそれで新鮮でいいんじゃないか?それより食事にしよう。ろくなものを食べていなか

たんだろう?」

「うん。なんかオオカミに似た獣の肉とか、サボテンみたいな植物とかで、食いつないでいた

よ。何しろあの世界は太陽をエネルギー源にするわけにはいかなかったから、どんな味でも

食べなくちゃいけなくて・・・。」

「すごいものを食べていたんだな。味の方は・・・聞くまでもないようだ。」

話しているうちに料理が運ばれてくる。事情を話したせいかずいぶんと腕を振るってくれたよ

うだ。

料理を見て瞳を輝かせるクラークと共にアルフレッドの勧めるまま早速食べ始めた―――。

 

食事をしている間、料理に舌鼓を打ちつつクラークに向こうの世界の話を聞く。

「刀でオオカミを倒したのか・・・。」

「うん。食うか食われるかだったから仕方なくね。そしてどうやら彼らのボスだったらしくて残り

のオオカミたちを掌握するのは楽だったよ。」

「それで犬橇とは斬新だな。」

「車の燃料がなくなって移動手段に困っていたところだったからね。あ、倒したボスオオカミは

きちんと食べたよ。」

「・・・・・・食ったのか・・・・・・。」

そのような会話をしつつ、食べ終わる頃には彼が還ってくるまでの話を一通り聞くことができ

た。

 話を聞くだけでも、ものすごいサバイヴァルっぷりによくぞ還って来られたものだと思う。

 話を聞き終えて、軽い沈黙が降りた時今度はクラークが尋ねてきた。

「ブルースはどうしてたんだい?僕が死んだと思ってなかったんだろう?」

興味津々といったクラークに、いない間何をしていたかなんて言う気は起こらなかった。

「・・・特別なことはしていない。それより疲れてるだろう?部屋を用意してあるから早めに休ん

だらどうだ?」

目をそらしつつ誤魔化してみたが、こういう時は以外と鋭いこの男をそう簡単にごまかせるわ

けもなく、

「ブルース・・・。」

名を呼ばれて言及されそうになるが、

「私も疲れた。もう休む。部屋はアルフレッドに案内してもらってくれ。」

そう言い置いて逃げるように部屋へと向かった―――。

 


髭と髪のお話は某サイト様のお話と、風上さんにいただいたファイルの柄より妄想。

床屋さんは苦労してるし読んでる雑誌は蝙蝠本だし、大変可愛らしい一品。

読み切り風にしたかったのにうまく収められなかったので続きます(爆)。

 



     
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