予告などはしてないけれど、あの家の有能な執事は僕の訪問をきっちり予測していて僕の

分のお菓子も用意してくれてるだろうな・・・。

 でも僕が一番欲しいのはもっともっと極上のお菓子なんかでは補えないもの―――。

 

 

はろうぃん〜クラークサイド〜

 

 

 張り切って訪ねた先で出迎えてくれたのは、いつもと変わらぬアルフレッドとくつろいだ姿の

ブルースだった。いつもならまだ夜の街に出ている時間なのに珍しい。今日の夜だけは犯罪

者も子供達に場所を譲ったのかな。

 当初の予定ではアルフレッドに頼んで待たしてもらおうと思っていたから、この時間にブル

ースに会えるなんてすごい嬉しい。けれど内心喜ぶ僕に対してブルースは、冷たい視線で今

日の気合の入った衣装を一瞥すると、

「・・・・・・帰れ。」

の一言のもとに目の前で扉が閉められる。僕は一瞬呆然とした後、あけてもらうために必死

でハロウィンお決まりの脅し文句を扉越しに並べ立てた。

 するとその騒音に耐えかねたのか、再び扉が開き、やっと中へ入れてもらった。

 たとえ中へ入れてくれても、お菓子を籠ごと面倒くさそうに押しつけられ、扉を指さされたら

だって拗ねたくもなる。

我ながら大人気ないと思いつつも盛大に拗ねてみせたら、やっと相手をしてくれた―――。

 

 アルフレッドの入れてくれた紅茶を飲みながら、二人でお菓子をつまむ。火の入った暖炉は

寒さを感じない僕をも暖かな気持ちにさせてくれる。そろそろそんな季節か。着る服を増やさ

なくっちゃ。

 それにしてもさすがアルフレッドが用意したお菓子なだけあって、どれもその辺で手に入るも

のとは味が違ってすごくおいしい。もしかして手作りなのかな?僕の前にはあっという間にお

菓子の包み紙が山になっていく。食べるのについつい夢中になっていたけど、ブルースがこ

ちらを観察しているのに気が付いた。やばい。食べ過ぎたかな。食べる手を止めて視線を上

げると、

「どこで手に入れたんだ?そんな衣装・・・。」

ああ。衣装を見てたのか。あ!アレを出すのは今がいいタイミングかもしれない。

「最近の仮装グッズはよくできてるんで、デパートで見かけた時に思わず買っちゃったんだ。

それにホラ。」

 ブルースが興味を持ってくれたのをチャンスとばかりに僕は、隠し持っていた衣装を差し出

した。

「・・・・・・まさかと思うが・・・。」

「もちろん君の分を買ってきたんだよ。僕のをかしてもいいんだけどサイズが合わないし。

・・・であわよくば着てくれないかな〜なんて。。。」

淡く持っていた希望を口にしてみると案の定、するどく睨まれた。

「やっぱりだめか。」

 予想していたためそう気落ちすることもない。僕は衣装をしまおうとしたが、ブルースが疑問

の答えを得た後もコチラを見ていることに気が付いた。どうしたんだろう?衣装が似合ってな

いのかな。気になって尋ねてみる。

「やっぱり似合わないかな?」

「いや。結構似合っているさ。お前が着ているととても闇の化身には見えないがな。だが、い

つもの方が似合ってはいるな。」

 珍しいブルースの肯定の言葉を聞き、少し嬉しくなる。そしてやっぱり彼が”スーパーマン”

の衣装を着ないことを残念に思う。

「君はきっとこの衣装も似合うよ。」

と、未練がましく衣装に触れながら呟く。数秒の沈黙の後、

「・・・そんなに見たいのか?」

あきれたようなブルースの言葉に、

「うん!すっごく!!」

と僕は大きく頷いた。そりゃあ見たいに決まってる!

「・・・・・・かせ。」

「え?」

今、なんて言った?

「一度だけだぞ。すぐ脱ぐからな。」

「いいの!?」

まさか本当にブルースがこの衣装を着てくれるなんて!!

 半ば信じられない気持ちで突っ立ていると衣装が手から取り上げられる。そして僕に「覗く

なよ!」と言い渡してから、着替えのために隣の部屋へ入っていった。機嫌を損ねるのはい

やだから、大人しく今日は覗かずに待ってよう。

 室内に入ったためはずしていたマスクを再びつけて、大人しく待つ。

 すると数分後、身体にぴったりとフィットした衣装を身につけた”スーパーマン”が扉から出

てきた。見慣れた自分より一回り小さいけれど、均整の取れたしなやかな筋肉に覆われたそ

の姿は鑑賞に値する。

 「思った通りだ!とても似合うよ!!いつも隠れてしまう青い瞳が見えて素敵だ!」

「・・・瞳もなにも何も隠す物がないからな。なんだか落ち着かない。よくこの衣装で平気だ

な。」

 いつもは隠れてしまう青い瞳が恥ずかしげに伏せられ、日に焼けていない白い首筋が目の

前にさらされているのはどうにも色っぽい。良かった。”バットマン”の衣装の露出部が少なく

て!狙われるのがヴィラン達だけじゃ済まなくなっちゃうよ!

 僕は内心胸をなで下ろしつつ、いつの間にか席を外してくれていた執事に感謝して、この二

人きりの時間を十分に堪能することにした。

「そうかい?僕は最初からコレだからあまり気にしたことがないなぁ。それより君が着るとこの

衣装、すごく鎖骨が色っぽいね。」

 さりげなく距離を詰め、鎖骨に口付ける。軽く吸っただけでも簡単に跡が付く。ブルースが

その刺激に身体を振るわせ口をつぐむのに、思わず笑みが浮かぶ。

「TRICK OR TREAT?」

今度の台詞で僕が要求したのはもちろん、子供へあげるためのお菓子なんかじゃない。

「っっっ!!さっきやったろう!」

頬を染めてブルースが僕を押しやるけど、こんな顔したブルースを逃がせるわけない。

「もっと甘い”お菓子”が食べたいな、ブルース。うんと甘いの。」

 我ながら欲望のにじんだ声で囁きながら、何度も唇をう。それだけでさっきのお菓子とは比

べものにならないくらい甘い。

「仕方がない。イタズラをしない代わりに”お菓子”は好きなだけ食べろ。」

諦めたのか、もはや抵抗を止めたブルースの腕が首に回り、耳元にささやきかけられる。

「好きなだけいいの?」

「ああ。好きなだけ。」

こんなこと言われたら、ホントに好きなだけ貪ってしまいそうだ。

「ではいただきます。」

 僕は彼が明日後悔するであろう許可に対して、うやうやしく手を合わせると彼を抱き上げ寝

室へと移動した。こんな時にスーパーパワーを使わないでいつ使うんだ!

 いつもとは違うまるでハロウィンのお菓子のような衣装を、ゆっくりと剥き中の”お菓子”を存

分に堪能することにした―――。

    


クラーク側から見た話もちょろっと書いてみました。

素でセクハラなクラークさんが好きです。

 



     

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