〜自覚〜

 

 

 もう二度と逢うことはないだろうと思っていたその人は、彼が過ごしてきた過酷な時

をその身に刻んでいた。

艶やかに流れていた美しい金髪は白くなり、ずいぶんと肉の落ちた身体になってし

まっている。

けれど、透明な湖水色の大きな瞳だけは昔と変わらずそこにあった。

大切な者を亡くした悲しみをその瞳に宿していたけれども―――。

 

 

 ベラッサからクルーザーによって脱出する中、この気高くも美しい人がいかに、彼

自身が育て上げた青年にとらわれているかを知った。

フェラスにとってライバルであり、ジェダイ聖堂を去る要因の一つであった自信の塊

のようなかの青年も、あの虐殺を生き残ることはできなかったのだ。

ジェダイの模範のようなオビ=ワンがアナキンの名が出た時はっきりとつらそうな顔

をする。

その顔を見る時、尊敬するジェダイマスターへの同情と青年への哀悼の気持ち以外

のものが自分の心に生まれることから目をそらしていた―――。

 トレヴァーの登場によっていくらか和んだ船内空気の中で、古びたローブにくるまり

オビ=ワンは心身ともに酷使した身体を休めていた。

ハイパードライブ中に少しでも体力の回復をはかるためだろう。

静かに瞳を閉じて休むその顔を眺めていると、このジェダイマスターが頑なに髭を

蓄えていた理由がよく分かる。

潜入のためにそり落とされたため髭は今その顔にはなく、たとえ髪が白くなろうとも

瞳を閉じ無防備なその顔は、幼ささえ感じる。

じっと眺めていると、その瞳がゆっくりと開き、透明な湖水色と目があった。

「・・・どうした?休まないのか?」

悲しみを秘めつつも穏やかなその瞳にフェラスは吸い込まれそうな気がする。

「いえ。ただ少しアナキンの事を思い出していて・・・」

その名がでた途端あからさまに曇った顔に、分かっていながら口にした自分へと何

か得体の知れないものへのいらだちが募る。

「・・・そうか・・・・・・。だが、少しでも休んで置いた方がいいぞ。」

そう言ってそっと頬に手を添えられる。

温かな手から流れ込んでくる、同じ温度のフォースにいらだちが収まってくるのが分

かる。

かつてジェダイ聖堂にいた頃みんながあこがれていた人が手の届く距離にいるのが

信じられない。

頬に添えられた手を握ると、その手首の細さに何かが胸の奥をつかむ。

「・・・オビ=ワン・・・」

自分の中にある得体の知れない感情の正体が知りたくて、聞こうとしたそのときハイ

パードライブから出た船が揺れた。

その揺れでオビ=ワンの身体がフェラスの腕の中に倒れ込む。

記憶の中より大分細くなってしまったその身体を抱き留めた時、胸に渦巻く得体の

知れないものの正体に気が付いた。

聖堂を出ることによって、抱くことを許されるようになったこの感情はひどく甘い。

「っっつ!すまない!」

腕の中で謝るこの人は、こんな感情など抱いたことはないんだろうか。

「いえ、オビ=ワンこそ大丈夫ですか?」

「君が受け止めてくれたから・・・。」

「もう目的地は遠くはないでしょう。わたしが操縦しますよ。」

「ああ、頼む。」

操縦桿を握り、目的の星へと濃密な星雲の中を進む。

操縦しつつも傍らにある気配に、気持ちに気付いてしまった今、小さな満足を覚えな

がら、この人といっしょであればこれから先の難題もなんとか乗り越えられるのでは

ないかと考えるフェラスだった―――。

 


ラストオブジェダイに萌えた初書き小説。

アナオビ前提のフェラオビで。Aさまの言うとおりなんだかヤバイ響き(笑)。

フェラスは基本片思いです。だってオビアナキンのこと好きすぎるんだもの。

アナオビ前提でしか読めないよ。ラストオブジェダイ。




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