〜 The age of the moon 1〜

 

 

 長い長い時間一人で生きてきた。・・・いや、この呪われた身が存在することが生きていると

言えるならばの、話だが―――。

 もはや遠い時の流れの向こうにかすみつつある古い記憶の中に、父母の死がある。吸血

鬼としての呪われた身でありながら、父母は財力を生かし人々のために尽くしていた。しかし

その正体がばれた時、父母は今まで尽くしてきた村人達の手によって葬られた。

 まだ、吸血鬼 として目覚めていなかった私は、執事に連れられただ逃げるしかなかった。

やがて吸血鬼として目覚めたこの身は時を刻むのを止め、変わらぬ姿のまま数百年の時を

過ごしている―――。

 父母の残してくれた財産は莫大で、何をせずともそれらを管理しているだけで楽に暮らして

いけた。同じく残された錆び付いた爵位を隠れ蓑に、私は世捨て人のように暮らしていた。世

間には極まれにしか姿を見せず、それも夜に限られている私のことを人々は、金持ちによく

いる変わり者と評しいつしか世間にも忘れられていった。

 しかしただ一人、懲りずに私を訪ねてくる物好きがいた。彼は神父であり、いくら「放ってお

け」と言っても聞かず、最低でも週に一回は尋ねてきていた。彼の訪問を現在この屋敷をた

だ一人切り盛りしてくれている執事が歓迎しており、あまり強く言えないのも原因の一つだろ

う。この神父の名前はクラーク・ケントと言った―――。

 

 今日もまたただ存在するだけの一日が始まった。もうすぐ月齢15満月の夜がやってくる。

吸血鬼としての本能が最も強く目覚めるこの日は、どんなに最低限の活動しかしていないこ

の身であっても、血を摂取しなくては生きていけなかった。自分が人間の血を吸えば、吸わ

れた人間は生きていけない。生命は細りやがて死に至る。そんな姿を見ることが耐えられな

い私は、心の中で詫びつつ家畜たちに手をかけ生きている。

 厚いカーテンの向こうで夕陽が沈むのを感じ、ベッドから起きあがった。起きあがる際に袖

がめくれ手首の傷が目に入る。何度も死のうとしたが、手首を切ったのでは死ねなかった。

血の渇きに耐えきれないのだ。己の手による傷は、痕を残さぬ身体のはずなのに消え去っ

てはくれない。この方法で駄目なことは分っているが、太陽に身をさらすことはどうしてもでき

なかった。かつて太陽によって死をもたらされた同胞を目にしたことがある。その苦しみ様は

今思い出しても身がすくむ。勇気のない己に自嘲の笑みをうかべつつ、着替えを済ませ食卓

へと向かった。

 もうすぐ闇に包まれるこの時刻であっても、この屋敷で並ぶのは朝食のメニューだ。

「おはようございます。ブルース様。良くお眠りになりましたか?」

「ああ。」

 満月の晩さえのぞけば、普通の食事で身体を維持することができるのだ、この身は。た

だ、時は同じようには刻んでくれないが。

朝食のメニューを並べつつ、何気なさを装って有能な執事、アルフレッドが声を掛けてくる。

「今晩も、ケント様がお見えになるそうです。」

「・・・あの男も懲りないな。」

「いかがなさいますか?お会いになりますか。」

 尋ねつつもこの執事が、私が外部の人間と触れ合うことを、特に彼と逢うことを望んでいる

のは知っている。実の親以上に接してくれるアルフレッドのささやかな望みをさしたる理由も

なく、蹴飛ばせるわけがなかった。

「もちろん会うさ。神父様を門前払いしたらどんな評判が立つか分ったものじゃない。今更と

いう気もするが、この街一帯で人望の厚い神父様を無下にはできない。」

「わかりました。では、おいでになりましたら客間にお通しします。」

「ああ、頼む。それまでは地下室にいるから、来たら呼んでくれ。」

「かしこまりました。」

数日後に迫った満月に備えて、次の犠牲を手持ちの家畜の中から選んでわけて置かなくて

はならない。地下室で行われるその行為のため、地下室にはアルフレッドすらも立ち入りを

禁じている。だが、満月の度に減る家畜と、地下室に籠もる主人に彼が薄々は感づいている

であろう事は知っている。しかし、何も言うことなく変わらぬ態度で接してくれるアルフレッド

と、時の流れの違いからいつかは別れる時が来るかと思う、と胸が締め付けられた。今一

度、一人に戻るのに耐えられるだろうか。そのときこそなけなしの勇気を振り絞って己自信に

始末を付けるべき時かも知れない。

 そのようなことをぼんやりと考えながら、温かな家畜たちに接しているとアルフレッドからの

連絡が来る。どうやらあの男が来たようだ。

 私はゆっくりと立ち上がると、地上の世界へと上がって行った―――。

 

     *   *   *   *   *

 

 客間に入ると、アルフレッドに出されたお茶を飲みながら、クラークが大きな体を神父服に

包みこみ、座っていた。この男が座ると妙にソファーも小さく見える。

「待たせたか?」

「いえ。まだ来たばかりですから。」

穏やかに笑う男は、まさに神に愛されて生まれてきたのだろう。なるべくして神父になったと

いった感じだ。

「お前も毎回良く来るな。」

「神を敬う心を広めることが私の使命ですので。」

「毎回ただ来て話をするだけで、特に説法するわけでもないのにか?」

「日常のいたるところに神はいらっしゃるんですよ。生きている者達すべてに宿っていると言

っても過言ではないです。だから日々を暮らすことも神を敬っているんです。こうして話してい

るだけでも思うだけで神を敬えるんです。」

そう笑顔で言われると、毎回うやむやになるこの会話も馬鹿らしくなる。そして、とりとめない

話を夜更けまでするのだった―――。

 

 とりとめない話をする内に大分遅い時間になった。この男は明日も朝から神父としての勤

めがあるはずだ。そろそろ帰した方が良いだろう。

「クラーク、もう時間も遅い。そろそろ帰れ。」

「ああ、本当だ。いつもついつい遅くまで話し込んでしまってすみません。」

「それは構わないが、明日も朝から仕事があるだろう。神父が寝坊しては格好つかない。」

「心配してくれるんですか?」

私の言葉にクラークが少し嬉しそうに笑う。

「ばっ、何を言っている!いいから帰れ!!」

少し頬を染めてしまったことに、口惜しさを覚えつつ男を追い出しにかかる。

帰り際、私に向き直ったクラークは少し真面目な口調で

「また、来てもいいですか?」

と尋ねてくる。

「どうせ来るなと言っても来るのだろう?」

「確かに。」

「・・・ただこの先数日は来るな。」

「なぜです?」

「・・・少し留守にするからだ。来ても会えない。」

とっさに口をついて出た嘘を、疑うこともなく素直にクラークが頷いたのにほっとして、彼を送

り出した―――。

 

     *   *   *   *   *

 

 クラークの来訪から数日後、満月の夜がやってきた。この日ばかりはアルフレッドすら近づ

けず、地下室に籠もる。あらかじめ連れてきて置いた家畜達に牙を突き立て存分に血をすす

る。温かな血潮が喉に溢れるように流れ込む感触に恍惚となる。

 本能の赴くまま次から次へと手を付ける。私に血を吸われた者達は程なく冷たい躯となっ

ていく。その姿が視界の端に入るたびに、高揚感に負けない程の自分への嫌悪感がわき上

がる。その嫌悪感から目を逸らし、ただひたすら自分の欲望を満たしてゆく。

 何羽目かわからない家畜に手を付けた時、突然と地下室の扉が開く。アルフレッドは決し

て近寄らないはずだ。あり得るはずのない事態に頭の芯が凍り付く。

 思考もままならない状態で振り向いたそこに立っていたのは、いるはずのない、神父クラー

ク・ケントだった―――。

 


大好き超人蝙蝠サイトマスター様方の素敵コラボに、も の す ご い萌えました。

そりゃあ、もう五臓六腑よじれるくらい激萌え。

だって、いろいろツボ過ぎてヤバイ。

で、天につば吐く行為ながらこんな話を書いてみたり。

伯爵で吸血鬼な蝙蝠様と神父で狼男な超人のお話。

読んだことある方ならまるわかりの設定と題名を某漫画から、豪快にぱくってマス。

もうやりたいほうだい二次創作。

妄想、あくまで妄想ですので広い気持ちで見逃してやって下さい。

あ!後、お坊ちゃまなのでお食事は家畜。拾い食いはなんだかかわいそうなので家畜。

 




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