〜コンパニオンアニマル〜

 

 初冬にしては暖かく、柔らかな日差しが気持ちいい日だった。頬を撫ぜていく

の感触も気持ちいい。

 今日はウェイン社の手がけた新たな慈善事業のお披露目の日で、僕はカメ

ラマンのジミーと二人で取材に来ていた。

 今回の慈善事業の内容は、「人間達のよき伴侶である動物たちのためにで

きること」というコンセプトで進められたものだ。要するに人間の都合で処分さ

れてしまう動物達を少しでも減らそう、というプロジェクトだ。主な動物としては

コンパニオンアニマルとして一般的な犬、猫、そして競走馬としてののレーン

から外れてしまったような馬などが収容されている。どの動物も、調教を入れ

た後に新たな家族として、迎え入れてもらえるようにすることを、目的としてい

る。

 この施設は、経営破たんした牧場を周辺の森林ごと買取り、動物との触れ

あいの場も兼ねた大掛かりなものとして建設された。入場はもちろん無料。乗

馬なども考えられないほどの低料金で楽しむことができる。動物と共に生きる

ことを、テーマにしているこの施設に話題は集まっていた。手がけているの

がウェイン社であるというのも、当然話題になる理由の一つだ。

 午後から全体へ向けての、会見を兼ねたお披露目が組まれているが、僕達

はブルースの計らいで一足先に、この施設へと来ていた。

 確かこの辺が待ち合わせ指定の場所だったと思うんだけど・・・。辺りに広が

る緑の中に人の気配はない。

「クラーク、ここであってるのかな。待ち合わせの場所。誰もいないけど。」

ジミーがファインダー越しに辺りを見回しつつ声をかけてくる。

「たぶんあってるはずだけど・・・。」

 少々不安になりつつ、気配をさぐると誰かが近づいてくるのがわかる。どうや

ら間違っていなかったらしい。

 しばらくすると木立の中から、艶やかな青毛の馬にまたがった人影が見えて

きた。近くまで来るとそれがブルースであることがわかり、声をかけようとした

がその装いに息を呑む。

 白いぴったりとしたキュロットに良く磨きこまれた黒の革長靴、パリッと糊の

利いた白いシャツに同色のアスコットタイが胸元を形良く飾り、上半身を包む

燕尾服は身体のラインにそって流れ、ハットを被ったその姿は、まさに貴族そ

のものといったものだった。、隣ではジミーもカメラを構えるのも忘れ、口を開

けて見惚れている。

 ぽかんと見惚れる僕らの前に滑らかに馬を進ませてきたブルースは、目の

前に馬を止めると、まるで重力など存在しないかのように軽やかに飛び降り

た。ハットを取り、こぼれた髪を撫で付ける。

「やあ、良く来たな。二人とも。今日は是非取材だけでなく楽しんで行ってく

れ。」

笑いながら差し出された手も、真っ白な手袋に包まれていて眩しい。

「どうもお招きありがとうございます。で、今日は随分と、その、華やかな格好

ですね。」

「ああこの格好か。今日はこの牧場で調教された馬のお披露目なんだ。競走

馬を仕込み直して乗馬にした馬がほとんどだが、中にはこの馬メインテーブル

のように競技に出場するのを目的に最初から調教された馬もいる。この馬は

世界レベルの競技にも使える用仕込まれていて、大きな大会にも出場できる

能力がある。このプロジェクトは乗馬に関しては、入り口から頂点までを手が

けているんだ。世界レベルの選手にも来てもらって調教や技術指導に当たっ

てもらっている。」

 ブルースが愛しげに首を軽く叩いてやると、うっとりと目を細めるその馬は、

むっちりと肉が付いた大きな馬で、サラブレッドとは品種が異なるようだ。

「そのお披露目は、選手ではなくあなたが?」

「私も一応馬術の心得があるからな。是非、話題づくりのために協力してくれと

頼まれた。この服装は馬場馬術の正装なんだ。」

やっと現実に帰って来たらしいジミーがここで口を開いた。

「よくお似合いですよ!写真を撮っても?」

「もちろん。」

 黒曜石のような漆黒の馬の側に立つブルースは、とても絵になる。こんなに

太陽が似合うのに、いつももったいないな。

 ジミーが必要枚数以上の写真を撮り終わると、

「午後の会見までにはしばらく時間がある。二人とも此処の馬に乗ってみる

か?」

とブルースが誘ってくれる。僕が魅力的な誘いに迷っていると

「僕はもう少しこの施設の写真を撮りたいんですが、いいですか?」

「ああ、かまわない。動物達の迷惑にならなければどこを撮ってもいい。」

「ありがとうございます。じゃあ、クラークだけ乗せてもらいなよ。」

そういい置いてさっさとジミーは写真を撮りに行ってしまった。

ジミーが去るとブルースの口調が砕けた口調になる。

「お前はどうするんだ?クラーク。」

「乗せてもらいたいけど、その・・・」

「乗れないとか?」

「牧場育ちだから人並みには乗れるよ。ただ、ちょっと、育ちすぎたから・・・。」

「重すぎると?」

「うん。僕が乗ると動物虐待のぎりぎり、境界線だった気がする。」

「それくらい誘った時点で考えてあるさ。ついて来い。」

ブルースは馬の手綱を手に、近くの厩舎まで歩き出した。

 

     *     *     *

 

 あらかじめ連絡があったのか、そこには既に馬装を終えた馬が一頭待機し

ていた。

「ファルコン号だ。こんな大きさだが、馬場、障害、総合となんでもこなす名馬

だ。馬格が大きいからお前が乗っても大丈夫だろう。」

 なるほどその馬は普通の馬よりも二回りほど大きく、下手をしたら重種に見

えるような大きさだった。しかし馬場馬術にも使われるといわれていただけあ

ってバランスの取れた良い肉付きの馬体をしていて、毛色は雪のように白く、

輝く大きな目をしていた。人懐っこいらしく近づいた僕に鼻をこすり付けてくる。

 久しぶりに味わう懐かしい温もりに、すごく乗りたいけ気持ちはつのる。けれ

どスーツで乗るわけにも・・・と思っていたら乗馬服が一式放られた。

「そこのクラブハウスで着替えて来い。」

 僕は不自然ではない程度の早さで、大急ぎで着替えてくるとブルースと外乗

に出かけた―――。

 

 森の中を馬で進んでいくのは、心が洗い流されるようですごく気持ちがいい。

しかも隣を行くのは最愛の人だ。僕は”棚ぼた”とも言える外乗デートに顔がに

やけるのを止められなかった。

「・・・何をにやにやしているんだ?」

「ブルースとこんな昼間から、堂々とデートができるなんて嬉しくて!」

「これからお披露目で、まだ馬に乗るんだから変なことはするなよ。」

うきうきと言った台詞に、冷たく釘を刺される。照れ屋な恋人を持つと大変だ。

「そんなことしないよ!・・・でも今日は泊りがけで出張だから、もし夜の予定が

空いてたら・・・」

 不埒なことはしないと否定しつつも、こんな綺麗な恋人の姿を見て何も感じ

ないわけない。だからお伺いは立ててみる。何度袖にされても、めげないこと

が肝心なんだ。

「パーティーの後は特に予定はない。」

 ぼそりと答えるブルースの横顔に赤みが差しているのを見ると、ホントは今

すぐ押し倒したい。

「泊まるのは同じ宿泊棟だが、オーナースペースに私はいる。用があるならそ

こに来い。」

こちらを見ないで続けられる台詞に

「わかったパーティーが終わったら尋ねるよ!」

思い切り笑み崩れるのはどうしようもないことだった―――。

 

 

 森を抜けて、牧場をぐるりと囲う道にはウッドチップが敷き詰められ、馬の足

に優しい。あまりの気持ちよさに、ついつい遠くまで来てしまった僕達は軽く馬

を駆けさせ、会見に間に合うように急いだ。

 厩舎まで戻ってくるとブルースと別れ、スーツに戻った僕は、会見会場も兼ね

るお披露目の場に急いだ。スーツで走っていると、後ろから追いついてきた馬

の上から声が降ってくる。

「そこっ!馬が驚くから牧場内は走るの禁止!」

 笑い混じりのその声に、見上げた視線の先の馬上にいたのは、ディックだっ

た。ブルースとは異なる服装だが、彼もまた馬術の正装をしている。短い赤い

ジャケットに、頭の上にはヘルメットを載せたその装いは障害馬術の正装だ。

「ディック!!ごめんよ、急いでいたものだから。それより君もお披露目に参加

するのかい?」

「うん。ブルースは何でもできるんだけど自分じゃもう重過ぎるから、って言って

さ。障害は僕が見せることになったんだ。」

「そうか。楽しみにしてるよ!頑張って。」

「ありがとう。それじゃまた。」

 ディックは颯爽と馬に速歩をさせると、今度は早歩きで急ぐ僕を追い抜いて

いった。

 

 会場に着いた時既に、馬場の周りは人だかりだったけど、僕は体格を活

かしてなんとか全体が見回せる位置をキープした。さすがにジミーは最前列

でカメラを構えている。

 僕が見る場所を決めるとすぐに、ざわついていた会場が静かになった。

 シンと静まり返った会場に曲が流れ始めると、ブルースが馬場に駆歩で颯爽

と入ってくる。

 馬場、ドレッサージュの競技の中でもレベルの高い競技でしか行なわれな

い、曲に合わせた演技で、曲の中に様々な演技を盛り込む。人で言うところの

フィギュアスケートのようなものだ。馬の歩様や呼吸全てを把握し、人馬一体と

なっていないとなしえない競技で、もちろん乗り手の腕前が抜群なのは言うま

でもない。最高の乗り手と馬が組むと、まるで馬が自らの意志で舞っているよ

うにも見える。

 ブルースと先ほどの馬メインテーブルは当にその組み合わせだった。人と馬

との境界線がないかのように、ぴったりと息の合った演技で次々と難しい技を

こなしていく。ゆったりとしつつも弾むような躍動感を備えた優美な演技は、見

るものにため息をつかせた。馬の筋肉が収縮しうねる様は、艶やかな毛皮と

合わさり美しかったが、ぴったりとした白いキュロットとブーツに包まれた足

が、馬体のカーブに合わせて伸びているのも、なんとも艶めかしい。燕尾服も

ジャストサイズのためか肩から腰への締まったラインが良く見て取れる。

 女性の記者だけでない見惚れた視線に、僕は誇らしいような、隠したいよう

な微妙な気持ちを味わう。

 演技が終わり馬が静止後、ブルースがハットをとって一礼すると、割れんば

かりの拍手が起こる。満足のいく騎乗ができたらしいブルースが、馬を褒めて

やりながら笑顔で

「次はあちらの会場で、障害馬術をどうぞ。」

 と、隣の障害馬場を指し示すと、演技について褒めそやしつつも、みんなぞ

ろぞろと移動し始める。そして既に準備万端整えていた、ディックやその他選

手達はみんなが移動し終わるとすぐに障害のコースを回ってみせた。迫力の

ある美しい飛越姿に、こちらでも割れんばかりの拍手が起きた。ディック達の

騎乗をいっしょに見ていたブルースだが、馬体が冷えないように馬服を着せた

メインテーブルが連れてこられると再び騎乗し、障害チームと共に全員で挨拶

をして、この日の馬術のお披露目は終了した。

 終了後、馬上で会見に応じるブルースからはこの施設に自信を持っているこ

とが良く伝わってきた。そして記者達にもここが動物のことを考えて作られてい

ることが伝わったのか、質問は好意的なものが多かった。ただ中にはブルー

スの装いに対するセクハラまがいのコメントも混じっていて、ブルースは笑いな

がら流していたが、僕はその記者に対して内心ヒーローにあるまじきことを考

えてしまった。

 

 

 和やかに会見が終わった後に各施設を回り、犬や猫、その他の馬の様子

を見学し、また引き取られるまでのシステムがわかりやすく説明される。里親

に渡された後も、きちんとチェックしフォローするシステムが出来上がってい

て、この施設が実際に活きていくであろうことが、よくわかった。広い施設を集

団で一通り見て回った頃には初冬の短い陽は傾き、辺りは大分暗くなってた。

宿泊棟に隣接するパーティー会場にそのまま通された僕たちは、外を歩き回

ったおかげで冷えてきた身体を、それぞれアルコールや湯気の立つ料理で温

める。まあ、僕には寒さもアルコールも関係ないんだけど。適当に料理やアル

コールを摘みながらブルースの姿を探していたら、会場の隅に避難しているデ

ィックを見つけた。

「やあ。今日はお疲れ様。」

手元の皿に集中していたディックの注意が、こちらに向けられる。

「クラーク!ブルースはあっちでオッサン連中に囲まれてたけど、行かなくてい

いの?」

「・・・飛んで行って攫ってしまいたい気持ちは山々だけど、クラーク・ケントのま

まそんなことをしたら大問題だ。」

「あはははは。世を忍ぶ姿なのも大変だね!」

内心を抑えた冗談めかした言い方に、ディックが笑ってくれて良かった。

「それにしても、今日の君の乗馬の腕前には恐れ入ったよ。」

「ふふふ。ブルースとアルフレッドが教えてくれたんだ。ブルースはもちろんだ

けど、アルフレッドもすごく上手いんだ。ブルースの師匠なだけあるよ。」

「へえ。彼は何でもできるんだね。」

「うん。本当に。さて、僕はもう食べるだけ食べたから、先に帰るよ。明日学校

があるし泊まらないんだ。隣接して作られたヘリポートからひとっ飛びだ。」

「そうか、気をつけて。」

「クラークも。これからブルースに会うんだろ?セクハラされて気が立って

る!!」

その台詞に苦笑しか返せず、帰る彼を出口まで見送った。

 会場に戻ると、ブルースと身長は変わらなくとも、身体の幅は倍はありそうな

いい年した男が、なれなれしくブルースの腰に手を回しているのが見えた。タ

キシードに着替えた彼も文句なしに綺麗なため、彼以外にもたくさんの人間が

ブルースを囲んでいる。危うくヒートビジョンが出そうな光景になんとか耐えた

僕は、これ以上耐えている自信も心許なくて、ジミーに先に部屋に行っている

旨を告げ、会場を後にした―――。

 

     *     *    *

 

 スーツを脱いで着替え、一応シャワーを浴びた僕はしばらくあてがわれた部

屋でぼんやりしていた。どれくらい時間が経ったのか、隣り合わせの部屋にジ

ミーが戻って来る音が聞こえた。どうやらパーティーが終わったようだ。

 その後もう数十分我慢してから、そっと部屋を抜け出しブルースの元へと向

かった。オーナースペースは一応一般人立ち入り禁止にはなっているけど、そ

こはスーパーパワーで何とでもなる。僕は大して苦労することもなく、スペース

へ通じる廊下へたどり着いた。

 ここの建物は全て平屋になっていて、どこも贅沢に空間を使ってあるが、オ

ーナースペースは更に広々としている。

 別棟になっているそこへ行くための廊下も、僕のアパートの部屋が入ってし

まいそうなほど広い。両側も大きく窓が取ってあり、今は闇と合間に瞬く星しか

見えないが、昼間であったら牧場の景色を楽しめるであろう。僕は珍しく地上

から見上げる星を窓越しに眺めながら、部屋へと急いだ。

 扉の前に立ち、ノックすると中からすぐに

「どうぞ」

という返答が返ってくる。

はやる気持ちを抑えながら開けたそこには、予想外の光景があった。

 

 パーティー終了後すぐにシャワーを浴びたらしいブルースはすでにくつろい

だ服装で、ベッドの上に脚を投げ出して座っている。しかしその太腿の上に

は、大きな犬が顎をのせ満足そうに寝そべっていた。

「ブ、ブルース・・・その犬はいったい・・・」

「お前は私を裏切って先に帰ったから、受け取ってないんだったな。パーティー

の最後に、ここでしつけられた犬たちと、希望者は一晩過ごせるように段取り

がなされていたんだ。自分の家ではないせいか、かなりの人数がいっしょに部

屋に帰っていった。」

「裏切ったんじゃなくて、ちょっと我慢の限界が・・・それより、君も連れて帰って

きたのかい?」

「まあな。主催者が手ぶらというわけにもいかない。それに・・・」

彼の視線を追えば、心の底から満足そうな顔が目に入る。こんなに甘えること

ができたのが久しぶりなのか、と思うとゆるす気に・・・・・・なれなかった。

 僕もしてもらったことのない膝枕、それも太腿の付け根の方に鼻をくっつけ、

顔をぐりぐりと押しつけている。

「こら、甘えて!」

 そう叱り、額をこづいてやっているブルースだが、声が笑っているし表情も優

しい。大人げないと自覚しつつもも犬に嫉妬し引きはがそうとすると、僕は本

気でなく殴られた。

「ひどいよ!ブルース!!」

「何がだ!!!犬に嫉妬するんじゃない!」

「だって僕はしてもらったことないのに・・・それに、昼間から夜を、この時間を

楽しみにしてたのに・・・。」

ベッドの端により、膝を抱えて拗ねていると、後ろから盛大なため息が聞こえ

た。しかしため息の後に続いたのは信じられない台詞だった。

「じゃあ、反対側を特別に貸してやるから、文句を言うな。」

え?今の現実に聞こえた??

あまりの驚きに固まっていると、

「したくないんなら・・・」

と台詞を撤回されそうになる。

そんな!!こんなチャンスを逃がすなんて!!!

「是非、是非、貸していただくよ!」

僕が嬉々として側に寄り、頭をのせると犬と同じように頭を撫でられた。

それでも、全然嬉しい!くつろいでいるブルースの太腿は良質の筋肉に包ま

れているせいか、弾力があるものの柔らかく最高の感触だった。

ほとんど夢見心地の僕の耳に、ふとこぼれたと言った感じのブルースの声が

降りてきた。

「この犬は、”言うことをきかない”という理由だけで、処分施設に連れてこられ

たんだ。少し躾れば、どんなことでもできるくらい利口な犬なのに。そしてこん

なにも人が好きなのに。」

静かだが、怒りを含んだその声に思わずふり仰ぐ。声に怒りが含まれても、僕

に触れていないもう片方の手が優しく犬の顎をくすぐっている。その手に必死

さが感じられるほど、顔をすり寄せるその姿を間近に見て、僕はこの犬が学生

だった頃飼っていた犬と同じ犬種なことに気が付いた。彼も非常にやんちゃだ

ったけど、きちんと教えればどんなことでもこなす、素晴らしい相棒だった。

「・・・この子は君が引き取るのかい?」

「いや。私では側にいてやれないからな。仕事仲間の家族の家に引き取られ

ることになっている。」

「今度こそ幸せになれるよ。」

そう言いながら、僕も寝ころびながだけど頭を撫でてやると、その手を舐めてく

れた。

「・・・ああ。」

頷き、穏やかな笑みを浮かべたブルースの横顔は本当に綺麗で、この顔を独

占できるだけでも良しとする気になる。

僕は、気持ちを切り替えるために新たな話題を切り出した。

「ねえ、ブルース。君が今日お披露目で見せたみたいなこと、僕もできないか

な?」

「おまえが?・・・筋は悪くないようだから、練習すればできるかもしれないが」

「本当!?」

「本当だ。そんなにやってみたいのなら、今度この施設で練習してみると良い。

いい講師を紹介してやる。」

その言葉に、なんだブルースが教えてくれるんじゃないのか、と僕が少しがっ

かりしていたら、それに気が付いたブルースに

「私が講師では不満か?」

とイタズラっぽく聞かれる。とんでもない!!首をぶんぶん横に振ると、

「じゃあ、今度招待しよう。ミスター・ケント。」

芝居がかった仕草で笑いながら言われ、

「ありがとうございます。」

僕はお礼を言いつつ、辛抱溜まらなくなって伸び上がり口付けた。

柔らかな感触に、自然と接吻が深くなる。思わずその肌に手が伸びたところで

制止がかかった。

「今日はここまでだ。」

そう言ってシーツの間に潜り込んでしまう。やっぱり独り寝か・・・と僕がわびしく

考えていると、そのシーツの端が持ち上がった。

「何もしないなら、泊るのは、許してやる。」

おあずけ状態にたとえ一晩中眠れなくとも、僕がこんな誘いを断れるわけもな

く、すぐさま隣に滑り込んだ。

 今日一日のできごとで疲れていたのか、程なく眠りについたブルースとその

足下に安心しきって、だらしなく伸びて眠る犬の姿を見ていると、穏やかな気

持ちになることができた。ブルースの眠りは深いらしく、その力の抜けた身体

に触れても目覚めない。髪を撫でその額に口付けると、僕も既に夢の世界の

中にいる二人にならい、愛しい人を抱き寄せ眠りにつくことにした。

 

     *     *     *

 

 翌朝、帰路につく人々の半数以上が、新しい家族といっしょだった。一晩過

ごす内に運命を感じたらしかった。それぞれの傍らや、腕の中で幸せそうな動

物たちに、こちらまで幸せな気分にさせられる。

 そんな新たな家族達の姿をニコニコ見ていたら、さりげなく近寄ってきたブル

ースが話しかけてきた。すでにいつもの仮面をかぶっている。

「ミスター・ケント。連休が取れるのは次はいつだ?」

「えっと、再来週の週末でしょうか。」

「では、その日を開けておきたまえ。約束を果たそう。」

「ありがとうございます!!」

 恋人との嬉しい予定が入った僕は、ジミーに不審がられながら、上機嫌で帰

路についた―――。

 


ここまで読んでくださった方、お疲れシター!

当社比ではやたらに長い、二人の乗馬デートの話でした。

元馬術部なせいか、馬の話を書くとついついマニアックなネタに走ってしまいま

す。馬場ってなによ?と思われる方多いかなーと思ってフォローのページをつ

くって見ました。↓

  

これもやたらに長いので、そして画像が重いので、

お暇な方は覗いてやって下さい。

でてきた馬の名前、メインテーブルとファルコン(和名で隼)はかつての愛馬の

名前です。前者はサラブレッドの女の子。後者はセルフランセ(中間種の一

種)のせん馬(去勢した馬)でした。一応性別はお話の中ではメインちゃんが女

の子、ファルコンは牡馬になります。乗馬の乗りやすさは、

せん馬>牝馬>牡馬>の順になっているので、乗馬はせん馬が多いです。

女の子は気分やさんなので、気に入った人が乗っているとやる気をだします。

坊ちゃまはもてるからナ☆馬にまで。もちろんファルコンも坊ちゃま大好き。で

も彼はメインちゃんも大好きです。良く振られているけど。

そういうわけで、女の子を青毛(黒)、男の子を白馬(白)にして、ツンデレカポ

ーにしたら、私が割と萌えられるのでそうなっています。

もうここまでで大分長い後書き(汗)ですが、最後に一つだけ。このお話で坊ち

ゃまがやってるこのプロジェクトは私がお金持ちならやりたいことです。ヨーロ

ッパなんかでは実際にある。日本でももっとこういうの広がらないかな。やって

る方々はいらっしゃるんですが。ちょっぴり真面目ネタも混ぜてみました。

馬ネタはまた書きたいな☆といいつつこの辺でv

 

 

よろしかったらポちりとお願いしますv





























































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