〜 The age of the moon 3〜

 

 翌日アルフレッドが部屋で動く気配にぼんやりと徐々に意識が覚醒する。本能の求めに

従いたっぷりと血を摂取した次の日は、いつもならば体が軽い。しかし今日は、頭が目覚め

初めているというのにけだるい身体のせいで、目を開けることができない。

 その間もアルフレッドは歩き回り、太陽が最期のあがきでしがみつく、ひんやりと冷えてき

た外気を窓を開け放ち取り入れ、室内の明かりをつぎつぎに灯していく。枕元にまで明かり

が入ると、ようやく呻きながらも起き上がった。

「お早ようございます。ブルース様。」

 いつものがら張りのあるアルフレッドにの声が私の名を呼ぶ。今や私の名前を呼ぶのはア

ルフレッドだけで、その響きは心のやわらかい部分をくすぐり心地よい。・・・と、昨日の夜の

記憶がフラッシュバックし、行為の最中に欲望に濡れた声で名を呼ばれたのを思い出してし

まった。心にわけもなく苛立ちがつのる。。これは何に対する苛立ちだろうか。私に?それと

もあの男に?考えてもさらに苛立ちがつのるだけで答えは出なかったが、どうやら顔に出て

いたらしく、

「いかがなされました?どこか体調でも?」

と言って心配してくれるアルフレッドに

「何でもない」

と笑って誤魔化し、だるい身体を無理矢理動かしベッドから降りた。アルフレッドが差し出して

くれた服を受け取り着替えようとしてシャツに手をかけ、ふと気が付く。このシャツを着せたの

は誰だ?いくら思い出そうとしても、昨夜の記憶は途中で途切れておりわからない。まさかア

ルフレッドに「着せてくれたのか」などと聞けるわけない。あの男の良識を信じるしかなさそう

だった。

 そして、何やら嫌な予感めいたものを感じ、アルフレッドの隙を伺い襟元から中をのぞくと、

 

「とても着替えられたものでわないことがわかった。アルフレッド、今日はシャワーを浴びて

から着替える。」

そう声をかけると不思議そうな様子もなく、うなずかれた。

「かしこまりました。後程洗い立てのバスタオルをお持ちします。お食事はその後でよろしい

ですか?」

「ああ、頼むよ。」

アルフレッドの自然な態度にほっとしながら着替えを受け取り、シャワールームに向かう背中

に珍しく声がかかった。何か気付かれたか、とぎこちなく振り向くと

「いい忘れておりましたがケント様が本日もいらっしゃるそうです。丁度よいですから、お食事

をご一緒にどうぞ。」

なぜここであの男の名前が出てくるのだ!?驚きのあまり取り繕うのも忘れ、顔に出てしま

う。その表情を咎めるものと取ったのか、

「いつもおいで下さるのでたまにはお食事くらいと思いお誘いしたんですがまずかったでしょう

か?」

と申し訳なさそうにアルフレッドが尋ねられてしまった。

「いや、いけないことなどない。ただ二日連続で来ることなど今までなかったから驚いただけ

だ。むしろ気を使わせてしまってすまない。」

アルフレッドのこの様子では本当に何も知らないのだろう。内心安堵しつつ、当たり障りのな

い理由でその場を誤魔化すと、そそくさと部屋を後にした。

 

     *   *   *   *   *

 

 シャワールームで扉を閉め切り、一糸纏わぬ姿になると昨晩の情交の名残がよくわかっ

た。昨晩は未知の体験に余裕がなく、途中までの記憶すら切れ切れでいまいち頼りにならな

い。しかし、シャツを脱いだ身体は想像できる範囲の残滓もなくきれいで、どうやら事後清め

てくれたらしい。そのことには感謝しつつ、鏡に映る姿を眺めた。

 陽に当たったことがないゆえの白い全身には無数の赤い跡が散っていて、昨晩の記憶を

色濃く残している。その内の一つに触れてみると、昨日までは知らなかったゾクリとした感覚

が背中を走る。信じられない場所が熱を持ち痛むのも、思考から昨晩のことを切り離すこと

ができない要因になっていた。

 それでも頭を振り意識をしないよう努力しつつ、熱いシャワーを全身浴びた。シャワーを浴

びるとけだるさはともかく、頭はしゃっきりとする。私が浴びることのない太陽の匂いのバスタ

オルで水気をぬぐう。ふんわりと肌に触れるタオルはなぜか懐かしさを感じる。

 年を取らないことを誤魔化すため常に比較的年を重ねた執事を雇うことの多かった私に

は、もはや何人目の執事だかわからないアルフレッドだが、彼と居ると遙か遠い幼い頃の記

憶が甦ってくるようで、知らず内に甘えている気がする。こんな気分にさせる執事はアルフレ

ッドが初めてで、このタオルに込められた彼の利害のない気遣いと優しさが、こういった気分

にさせてくれるのだろう。彼ともいつかは別れなくてはならない恐怖がかすかに湧くが、今は

彼が側に居てくれることを感謝しよう。

 そんなことを考えながら身支度を整えた私は、もう既にあの男が待つかも知れないダイニ

ングへと、ことさらにゆっくりとした足取りで向かうのだった。

 


初めての次の日は辛いですよネ☆坊ちゃま(超笑顔)!

きっとクラークさんは気遣って坊ちゃまを居たたまれなくしてくれるはずです(断言)。

ブルースがものすごいアルフレッドのことを好きなことを再確認したところで続きます(爆)。

 




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