庭の紅葉がきれいに色づいていました。
オビ=ワンは、落ち葉を踏みながら一人庭を散歩していました。
いつも側に寄り添っている黒犬のリキは、
珍しくふらりと出かけていていないのを少しばかり寂しく思いつつも、
ゆっくりと庭を歩いていました。
本来なら一人で庭など歩ける身分ではないのですが、
早くに母をなくしてしまったオビ=ワンには、
御付きのものなどなく一人でどこを歩き回っても誰にも咎められませんでした。
後ろ盾がないせいで、着ているものも粗末で、
しかも、この時期に着るものとしては少々薄手のものでした。
継母の実の娘にあたる三人の姫君たちと自分とでは、
扱いが全く違うことはわかってはいましたが、
悲しく思うことはあっても、妬んだり恨んだりするようなことはありませんでした。
継母の言うなりでろくに顔も見せない実父に対しても、
お忙しいのであろうと、逆に身体の心配をしていました。
そんなオビ=ワンの楽しみはこうして、庭を散歩すること、
そして、書物を読み、外の世界へと夢を膨らませることでした。
今は知識でしかない外の世界にいつか行ってみたいと思っていたのです。
ぼんやりと物思いにふけりながら歩いていたオビ=ワンは、
カサリ、という落ち葉を踏む音に現実に引き戻されました。
リキが戻ってきたのかと思い、振り返るとそこには、
美しい若者が立っていました―――。
砂色の緩くウェーブした髪に、深い暗青の瞳。
オビ=ワンが生まれて初めて見るような美しい若者でした。
着ているものも、仕立ても生地も上等なもので、
一目で相当な身分であることがわかりました。
風にのって若者の着物に焚き染めてある馨しい香りが鼻に届くと、
自分のみすぼらしい格好が急に恥ずかしくなりました。
自分は、着る物もみすぼらしいし、
香りといったら、毎晩いっしょに寝ているリキと同じ、
落ち葉の匂いぐらいしかしないのです。
オビ=ワンが恥ずかしさのあまり身体を硬くしていると、
同じようにこちらを凝視していた若者が話しかけてきました。
「貴方のお名前はなんというのですか?僕の名前は・・・っ!!」
若者が言いかけたとき、茂みから大きな黒い影が飛び出してきました。
「リキっ!!」
いきなり飛び出してきた黒い大きな犬に若者が驚いている間に、
オビ=ワンは、出てきたリキを連れて大急ぎで屋敷に駆け戻ってしまいました。
屋敷の自分の部屋に戻りリキもいっしょに部屋に引き入れると、
ぴったりと戸を閉め、へたり込んでしまいました。
心臓の音がまだうるさいくらいにドキドキしています。
警戒心は強いものの信頼できると感じた人には懐こいリキは、
出会うなり引っ張ってこられたのにも関わらず、
あの若者に対して、まだ尻尾を振り続けていました。
彼が悪い人ではないということがわかって
なんとなく嬉しくなったオビ=ワンでしたが同時に、
彼の身なりの立派さを思うと
これより先自分との接点はないだろうことに、
改めて自分の置かれた境遇が悲しくなりました。
慰めるように鼻を寄せてくるリキを抱きしめるのでした―――。
出会いました〜。
多分、お互い一目ぼれ。
オビは着る物もろくに与えられない、
かわいそうな境遇です。
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