家の者達が帰ってきたその晩、オビ=ワンは灯りの元で遅くまで縫い物をしていまし

た。たまっていた縫い物の三分の一ほどをようやく片付ける事ができたのは、もう大

分夜も更けた頃でした。オビ=ワンの縫い物を手伝うと言ったアナキンは、言っては

みたものの一度もやったことがないため、大して役にはたてません。

リキを膝に抱いたまま、黙々と作業をするオビ=ワンを歯がゆい思いで見ているし

かありませんでした。

三分の一ほどを終えてもまだ、縫い物を続けようとするオビ=ワンに

「もういい加減休みませんか?一日やそこらで終わる量じゃないですよ。」

と、アナキンはそろそろ休むべく声を掛けました。しかし

「うん、でも・・・」

そう言ってまだ布を手にしようとするオビ=ワンに、らちがあかないと思ったアナキン

は唇をふさぐことによって手を止めさせることにしました。

「・・・んっ・・・ぅ・・・!」

いきなり口をふさがれたオビ=ワンは当然抗議を込めて抵抗しましたが、たくましい

腕の中にすっぽりと抱き込まれ、深く唇を貪られてはどうすることもできません。

すぐにくったりとアナキンに身体をあずけるのみになってしまいます。

呼吸を奪われたせいでぼんやりとした意識のまま、それでも

「・・・っ・・・はぁ・・・い・・・きなり・・・何を・・・」

潤んだ瞳のままアナキンを睨み、抗議の意志を示します。

そのどこまでも可愛らしい抗議に、目尻に軽く口づけ

「言ってもあなた止めないんだもの。もういい加減に休みましょうよ。こんなに根を詰

めて作業したらあなたの身体がどうにかしてしまいます。今日はこのまま寝てしま

いましょう。」

そう言ってオビ=ワンを抱き込んだまま、布団に横になります。

「ア、アナキン?」

その密着した体勢にオビ=ワンが動揺し呼びかけると

「今夜は何もしませんよ。このまま眠ってください。」

笑い混じりに言って額に接吻を落とされ、優しく背中を撫でられます。

腕の中の暖かさと、背中を撫でられる優しい感触にいつの間にか、オビ=ワンは眠

りに落ちていました―――。

 

    *    *    *    *    *

 

オビ=ワンが目を覚ますと辺りは明るくなっていました。昨晩言われるままにぐっす

り眠り込んでしまったことに少々気恥ずかしさを覚えつつ腕の中からぬけ出そうとす

ると

「目が覚めました?」

頭上から掛けられた声に視線を向けると穏やかに微笑むアナキンと目が合います。

「うん。昨日はありがとう。おかげでぐっすり眠れたよ。」

「それは良かったです。あなたのところに今日もまた大量の縫い物が持ち込まれる

みたいですからね。放って置けといっても聞かないあなたのことだから、睡眠くらい

はきちんと取っておかないと倒れてしまいますよ。」

「・・・今日も・・・?」

「ああ、さっきあなたが寝ている間にR2がやってきて教えてくれたんです。三の君の

夫の蔵人少将が賀茂の臨時祭で舞人に指名され、衣装を特別に仕立てるそうです

よ。あなたのところに持ってくるに違いない、と怒ってました。」

むしろアナキンが怒っている口調でそう教えてくれます。

続けて聞こうとしたオビ=ワンでしたが、その言葉が終わると同時に戸を叩く者があ

ります。素早く身を隠したアナキンを確認し戸を開けると、案の定布を大量に抱えた

女房が立っていました。

「姫君、また北の方が縫い物をとおっしゃています。」

そう言って心から申し訳なさそうに、布を差し出します。オビ=ワンがその量に少々

呆然としつつ受け取ると、そのまま帰ると思われた女房が

「北の方はきっとまた催促にくるでしょう。どうか私にも手伝わせてください。前々か

ら姫君を拝見していてお仕えしたいと思っていました。けれど北の方の手前なかな

かそうもいかなくて・・・。」

そう口を開きます。北の方の女房の中にはオビ=ワンの人柄を知り好意的な者もい

るのです。

「ありがとう。そう言ってくれるだけで嬉しいよ。」

オビ=ワンが驚きつつも笑いかけると、早速仕事を手伝うために布を手にします。

仕事を進めながら、やっと話すことができたオビ=ワンにその女房は盛んに話しか

けました―――。

 

「あなたさまだけ、いつもお寂しげでおいたわしい・・・。北の方は四の君にもお婿さま

を迎える準備をなされているのに・・・」

「おめでたいことじゃないか。どんな方を迎えるんだい?」

「今をときめく右近少将アナキン様ですわ。」

女房の口から実際にその名を聞くと、どうしてもオビ=ワンの胸は痛みます。

「・・・そう・・・その方はなんて?」

「結婚されるお気持ちなのでしょうね。こちらは準備を急いでおりますから。」

「・・・そう・・・。」

そう言ってうつむくオビ=ワンの姿を物陰から見つつ、アナキンはその女房の口か

ら出る知らぬゆえの嘘に、いらいらとしていました。女房の言葉に傷つくオビ=ワン

を早く抱きしめて安心させたいのに、一向に女房は出ていく気配がありません。

「四の君が結婚なされたらあなたさまはもっと縫い物が増えます。あなた様も早くご

結婚を・・・。」

「うん。相手ができたらね。これは一人でできるものではないし。」

「実はあなた様に是非お手紙を出したいと言う殿方が。」

「・・・え・・・?」

「弁少将とおっしゃる素晴らしい美男子で、お仕えしている私の従妹からあなたさま

のお話を聞かれて是非に、と。」

物陰で、「おせっかいめ!」とアナキンは舌打ちしました。

「・・・今何か音が?」

「いや、気のせいだよ。それで?」

オビ=ワンはあわててその場をごまかすため話の続きを促します。

「あ、はい。母上がなく苦労されている姫君なら細やかな心遣いをされる方だろう。

妻に迎えたい、と。

もう、行くたびに姫君のことを聞かれて今度お手紙を差し上げたいと。」

縫い物を進めつつ、そこまで話が進んだところで、

「少納言様。北の方がお呼びです。」

と他の女房が、手伝ってくれていた女房、少納言の事を呼びに来ました。

「おや、もうお呼びがかかってしまいました。」

なごり惜しそうに立ち上がる少納言に

「ありがとう。助かったよ。」

お礼を言うと

「また参ります。弁少将さまからのお手紙を・・・きっと。」

そう言い残して部屋を出ていきました。

戸が閉まるなり出てきたアナキンは

「気の利く良い女房だと思ったのに、なんの話だアレは!僕が隠れてなかったらオビ

=ワンもその気になったでしょうね。」

そう言ってそっぽを向きます。

「そんなことあるわけないよ。手紙を頂いてもそんな・・・」

「弁少将は女扱いが上手いと評判の男で美貌の色好みだと聞いています。その女

扱いのうまさは定評があって何人でも愛人にしてしまう、と噂されている男ですよ!

免疫のないあなたなんてイチコロです!」

「アナキン・・・」

「でもヤツは大層高貴な家柄だから、あなたも中宮ぐらいには出世できますよ。」

珍しく本気で拗ねているらしいアナキンがなんだかかわいくて、歩み寄るとそっと

後ろから抱きしめます。

「アナキンと出会ったのに、どんな高貴で美貌の方だろうと心が動かされるわけない

だろう?出会っていなかったとしても、私の話を真摯に聞いてくれたアナキン以外に

手紙をもらっても、私は出家する道を選んでいたよ。アナキンだったから此処にこう

しているんだ。」

そう一生懸命自分の思っていることを、抱きしめたまま伝えようとします。

しかし尚も黙ったままのアナキンに不安になったオビ=ワンが

「・・・アナキン・・・?」

とおそるおそる呼びかけると、いきなり床に押し倒されました。

「なっ!?」

「あなたかわいすぎ・・・。いったいどこからそんな殺し文句出てくるんですか。」

すっかり機嫌の直ったらしいアナキンが嬉々としてのし掛かってきます。

「何わけわからないこと言ってるんだ!早くどいてくれっ!」

「嫌です。昨日の夜我慢したから、もう我慢できません。」

言うなり抱き上げられ、暇がなくて片付けていなかった布団の上に下ろされます。

「あの少納言が手伝ったおかげで多少進んだから大丈夫ですよ。それにあの女房

の口からでた僕の結婚話にあなた動揺したでしょう?」

オビ=ワンはその言葉に思わず息をのみます。

アナキンの言ったことを信じると言ったのにもかかわらず、女房の台詞に傷ついた

のは事実だったため言い訳ができません。

とっさに言葉が出てこず無言になるオビ=ワンに

「まだ僕の気持ちが伝わりきってなかったみたいなんで、もっとしっかり伝わるように

がんばりますね。」

満面の笑みを浮かべたまま宣言します。

「・・・もしかして身体に、とか言う気じゃ・・・」

「あなたにしてはよく分かりましたね。しばらく誰もこなさそうだし、しっかり僕の気持

ちをわかってもらわないと。」

そう言うなり深く唇を合わせられとろける意識の中、今日は縫い物を進めることを

早々に諦めたオビ=ワンなのでした―――。

 


実際原作にもある焼き餅エピソードアナオビ版。

この部分読みながらアナキンなら焼きまくりそうだな、とおもっとリマシタ。

北の方まずは更なる縫い物攻撃。

次はある意味言葉責め?になります。お父が酷い。





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