二人はまず台所に出向き、オビ=ワンに差し入れるための食事を手に入れることに

しました。

台所の者達には、北の方がオビ=ワンにまた癇癪を起こして食事を与えないので

わけてもらえないか、という内容で事情説明をしました。

すると、北の方を知るものは誰もが同情的で、栄養価の高いものから保存のきくも

のまで、一週間分以上の食料を手に入れることができました。

それらの食料をできるだけ小さな包みに小分けに包むと、フェラスの懐に上手く忍

ばせます。

そして二人はオビ=ワンの閉じこめられている雑舎に向かいました―――。

 

雑舎の側の部屋では北の方が目を光らせており、R2は近づくことができません。そ

してもちろん雑舎には鍵がかかっています。持っているのは北の方のみです。どう

しようかと物陰で考え込んでいるR2にフェラスは目配せをすると、一人で北の方に

近づいていきました―――。

「母上お久しぶりです。」

「おや、フェラス君戻ったのですか。」

「はい、先ほど着きました。」

「あちらの家はどうでしたか?何か不自由などはありませんでしたか?」

「皆、大変良くしてくれました。しかし不自由といえば母上、あちらにいる間に沓を駄

目にしてしまったのです。」

「それは災難でした。」

「ええ。でも確か雑舎の中に一足予備があったように思うのです。近い内に蹴鞠に

誘われているので、すぐにでも沓が必要なのです。確認したいので雑舎を開けてくだ

さいませんか?」

何食わぬ顔で、でまかせを言うフェラスでしたが、雑舎と言う言葉に北の方は過剰に

反応します。

「雑舎!?そんなとこを探さなくとも新しい物を作らせれば良いではありません

か!!」

「しかしすぐ必要なのです!できあがるのを待っていては約束までに間に合いませ

ん!!」

二人が言い争っていると、そこへ大殿ドゥークーが通りかかりました。

二人から事情を聞き出したドゥークーは、

「何を争っているのだ。沓をみに入るぐらい良いではないか。よかろう儂が開けてや

ろう。鍵を貸しなさい。」

言うなり北の方から鍵を取り上げると、さっさと開けてくれます。

「ありがとうございます。父上!」

お礼を言うとすぐさまフェラスは雑舎の中に入りました。

中は薄暗く、しばらくたって眼が慣れるとやっと辺りがはっきり見回せるようになりま

した。

そして沓を探す振りをしながら奥まで行くと、金色の頭が隅にうずくまっているのが

見えました。

「オビ=ワン?」

フェラスが声を掛けるとゆっくりと顔を上げます。

「・・・フェラス君・・・」

オビ=ワンは意外な人物の姿に驚いた顔をしていましたが、その水色の大きな瞳は

薄暗い雑舎の中では灰色にみえ、しかも今まで泣いていたのかその瞳は潤んで、

目尻は暗がりでも分かるほど赤くなっています。

「帰ってきたらこんな事態になっているなんて驚きました。我が母親ながらあなたをこ

んなところに閉じこめるなんて情けないです。」

そう言ってオビ=ワンの手を取ります。

小さいながらもその貴公子然とした姿にオビ=ワンは笑みをこぼすと

「ありがとう。アナキンだけでなくフェラス君、あなたまで味方になってくれるなんて、こ

んな心強い事はないよ。」

嬉しそうに笑うオビ=ワンに、

「アナキンというのは、あなたの想い人ですか?」

と、多少の胸の痛みを感じながらの意を決しての質問に

「お、想い人なんて・・・」

オビ=ワンは頬を染めて口ごもります。

その様子に胸の痛みは強さを増しましが、口を開く前に

「フェラス君!!沓はあったのですか!!!」

入り口の方から北の方の怒鳴る声が聞こえてきました。

その声に、フェラスは懐から食べ物の包みを素早く取り出すと、オビ=ワンに渡しま

した。

「これはこの先少しの間の食料です。できるだけ早く助けられるよう、R2と手をつくし

ますが、それまではこの食料でなんとか乗り切ってください。」

そう言ったあと、オビ=ワンをおもむろに抱きしめると

「・・・気をしっかり持って下さいね。」

そう耳元で囁きます。その身体の細さにますます力がこもるフェラスでしたが、オビ

=ワンも自分の腕の中にすっぽり入ってしまうくらいのフェラスをしっかりと抱き返し

こんなにも優しいこの少年に感謝と親愛の情を込めて

「・・・いろいろありがとう。」

そう囁き返しました。

しかし、そこで再び北の方から声がかかります。

フェラスはオビ=ワンの身体を名残惜しげに離すと、雑舎の中を出ていきました。

外で沓はやっぱりなかったと言っているフェラスの声が、かすかに聞こえてきます。

そして再び、その戸にはしっかりと鍵が掛けられたのでした―――。

 


オビ=ワンご飯げっと!

書けば書くほどフェラスは報われないなぁ・・・と思いつつ続きます。





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