悠然と立ち去るグリーヴァスを呆然と見送ったR2でしたが、我に返ると大い

に慌てました。

 北の方が何か仕掛けて来るだろうと思っていたものの、このような方法でこ

んなに早く仕掛けてきたのは予想外だったのです。

 家の者達が出かける賀茂の臨時祭りは明後日です。今日、明日、なんとして

でもオビ=ワンを守らねばなりません。

 R2は先程後にしてきた雑舎に急いで戻りました。辺りに人気のないのを確か

め、分厚い戸を叩きます。少しの間の後、囁くような声が返ってきました。

「・・・誰だい?」

恐る恐るといった感じのオビ=ワンに、R2は自分であることを名乗った後、手

く事情を話しました。

話を聞いたオビ=ワンは、戸を挟んでもわかる緊張の滲む声で

「アナキン以外と肌を合わせるなんて絶対に嫌だ」

ときっぱりと言いきったものの、

「・・・けれど、どうしたらいいだろう?」

と不安気にアールツーに尋ねます。R2は自分がグリーヴァスに対して、オビ=

ワンが現在物忌みの身であると話すから、それを盾になんとか逃れる案を

しました。差し当たってそれ以上いい案も浮かびません。

そのため、今晩はなんとかその案で乗り切るしかありません。二人は不安に

思いつつ、緊張してその時を待ちました―――。

 

     *   *   *   *   *

 

 日が落ち、辺りが暗くなってきた時、早くも耳障りな咳の音が聞こえてきまし

た。典薬助グリーヴァスは、医師でありながら絶えることなく咳こんでいるた

め、やってくるのがすぐにわかります。程なく闇の中からその姿が現れました。

「ほう、出迎えとは・・ゴホっ・・丁寧なことだ。」

そう満足気に言うなり、すぐさま錠に鍵を差し込み戸を開けにかかります。

R2は慌てて制止し、オビワンが物忌みの最中であることを告げます。

「ふむ。ゴホンっ・・・それでは今日姫を儂のものにはできないということか?」

その言葉にとんでもない!と、R2は首をぶんぶん縦に振ります。

「・・・そうか・・・」

と、考え込んだグリーヴァスにこのまま帰ってくれるのかと一瞬期待したR2で

したが、

「わしは医師だ。ゴフゴフっ、せっかく来たのだ、ゴフっ・・姫の具合をみてしん

ぜよう。」

そう言うなり勝手に中へと入って行きます。R2が制止するのも聞かず、オビ=

ワンのいる雑舎の奥までたどり着くと、突然の訪問に驚くオビワンの肩に慣れ

慣れしく手を回し、引き寄せます。

 グリーヴァスは、北の方が自分にあなたをくださると言った以上、あなたの身

の回りのことは世話するからこれからは自を頼るように、と咳を挟みつつも

機嫌よく勝手にしゃべりまくります。

 しかしオビ=ワンはアナキン以外の、それもグリーヴァスなどに触れられて

きた心地もしません。着物越しにもその冷たくゴツゴツした手の感触に肌が

毛立ちます。

 気色の悪さに必死で耐えていたオビ=ワンでしたが、グリーヴァは一晩中

座り、夜明けがくると、やっと雑舎を立ち去ってゆきました―――。

 


おっさんねちこい。





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