アナキンも突然の出会いに驚いていたようでしたが、
ずっと会いたいと願っていてこの周辺に日々出向いていました。
その上での出会いだったためすぐに我に返るのも早く、
この幸運を無駄にしないためにさっそく、
「こんにちは。またお逢いしましたね。」
と、極上の笑みを浮かべながら挨拶するのでした。
一方のオビ=ワンは、
会えるなんてまったく考えてもいなくて、目の前の出来事にびっくりして
しばらく挨拶をされても呆然とアナキンを見つめていました。
しかし、ようやく我に返ると自分の身形や無礼さに急に恥ずかしくなりました。
アナキンは先日と同様、美しい着物にその長身を包み、
その着物に焚き染められているのか、ふんわりと香のよい薫りが漂ってきます。
一方のオビ=ワンは着古した袿(うちぎ)一枚でこの季節には薄着過ぎる
みすぼらしい格好です。
オビ=ワンは恥ずかしさのあまり先日同様、逃げ去りたい気持ちになりましたが、
挨拶されたのにも関わらず、そんなことをするのは礼儀正しいオビ=ワンには
できませんでした。
そこで、意を決して裾を払い立ち上がると真っ直ぐにアナキンを見つめ、
口を開きました。
「先日は失礼いたしました。人に出会うなんて思ってもなくてびっくりしてしまって・・・
今日も誰もいないものと・・・私はオビ=ワン、こちらの犬はリキと申します。」
頬を染めながらも、真っ直ぐに瞳を見て話すオビ=ワンの傍らで、リキは
アナキンに今にも飛びつきたそうに眺めながらちぎれんばかりに
尻尾を振っています。
「そんなに固くならないで下さい。こちらこそ、失礼いたしました。名乗ることも
せずにいきなり挨拶など・・・。でも、先日からずっと貴方のお名前を
知りたいと思ってました。貴方のお名前はオビ=ワンというのですね。
名乗るのが遅れましたが、僕、、いえ私はアナキンといいます。
どうぞよろしくお願いします。」
アナキンがオビ=ワンに向かいそう自己紹介すると、
まるで「僕もいるんだぞ」とでも言うかのように、リキが鼻を鳴らします。
アナキンもその様に笑いながら視線を向け、
「この黒犬は先日もいた犬ですね。君はリキと言うんだね。君のご主人様同様、
よろしくリキ。」
そう自分に向かって声をかけられたリキは、このことによって自分に許可を出した
らしく、今までこらえていた分も大喜びでアナキンに飛びつきました。
「っっ!、コラっ!!、いけないっ!!」
アナキンの美しい着物を汚してはいけないと慌てて叱りますが、とき既に遅く、
アナキンの着物の胸には大きな足跡がくっきりと残ってしまいました。
どうしたらいいかと困り果てたオビ=ワンは、ちらりとこの犯人を見つめました。
ところがリキだけは一人嬉しそうで思わずアナキンを見ると、
彼もコチラを見ていて、二人で顔を見合わせる形になりました。
無言で顔を見合わせているうちに、何だかこの事態におかしさがこみ上げてきて、
とうとう二人同時に吹き出してしまいました。
『ぷっ、あははははははは』
「ははっ、ご、ごめんっ、あはは」
あまりに笑いすぎて息も整わないまま謝ります。
「はははは、いいよ。着物くらい。」
ようやっと呼吸が整ってきたアナキンがやはり笑いながら答えます。
リキはそんな二人を見ながらなぜ笑っているのかわからないらしく、
きょとんとしています。
そんなリキを見てもう一度笑う頃には、二人はすっかりうちとけていました。
笑いが収まってくると、二人は庭石に腰掛け、落ち葉が降る中お互いのことを
知るために話し始めました―――。
せっかくのチャンスを彼はつぶしません。
また、あんまり進展してないんですが、つ、続きます(汗)。
とりあえず、打ち解けたみたいです。
リキは愛犬の勝手にゲスト出演。でっかい雄です。
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