初めて話したのにもかかわらず、二人の相性が良いのか、話はとても弾みました。
しかし、普段一人でいることの多いオビ=ワンは、父親以外の男性とは口をきくのも
初めてで、打ち解けたとはいえ多少固さが残っていました。
それも、常に聞き上手、話上手なアナキンによって次第になくなっていきました。
そしていつの間にか、今まで誰にも話したことのなかった『夢』の話まで、
話していました―――。
「オビ=ワンは外の世界のことに興味があるんだね。」
「そう。この屋敷の外に出て、もっと広い世界を見てみたいんだ。貴族ではない人々や
その暮らしの様子、それらを自分の足で歩いて見れたらな・・・。」
空色の瞳をきらきらさせながら話すオビ=ワンにアナキンは笑みを隠すことができませ
ん。
思わず笑顔になったアナキンにオビ=ワンはちょっと恥ずかしげにうつむきます。
「変かな。こういうことをしたいと思うのは。」
「いや、ちっとも。でも普通の姫君は牛車なんかで移動したがるもんじゃないかな。」
その言葉にオビ=ワンは驚いたように
「なぜ!?そんなの御簾越しにしか外を見れないじゃないか!」
といった後、
「・・・でもやっぱりこんな風に思うこと自体が変かな。」
そう言って今度は小首を傾げながら、見つめてくるオビ=ワンに一瞬息をのみつつも
「・・・いや、いいんじゃないかな。こんな変わり者のお姫様がいても。僕は好きだな。」
そうさらりとアナキンは言ってのけます。言った後更に見つめられ、、
男の人に冗談でもこんなことを言われたことのないオビ=ワンは、今度こそ真っ赤になって
うつむいてしまったのでした―――。
楽しく会話が弾む中で、ふとした沈黙が訪れました。
そのとき、ポツリとオビ=ワンが呟きました。
「リキはいいな・・・」
「え?」
「私はね、時々リキが羨ましいんだ。重い着物もなくて、どこかに閉じ込められることもなく
て、自由に飛び回っていても誰にもとがめられない・・・。」
そういうオビ=ワンはどこか遠い目をしていて、その細い背中を思わず抱きしめそうになり
ました。
その気持ちをなんとか押さえ込むことに成功したアナキンは、オビ=ワンの手を取り
「僕はオビ=ワンが人間でいてくれて嬉しいけどね。」
そう言いながらそっと手をとり、その甲に口付けます。
「なっ!なっ!何するんだアナキン!!!」
真っ赤になって叫びながら、とびずさるオビ=ワンに
「あはははは。かわいいね、オビ=ワンは。」
「か、かわいいなんて、どこ見て言ってるんだ!」
「その目も鼻も唇も全部さ。何よりその反応がかわいいよ。君が犬だったとしたらこんな反
応も見れなかったんだから、やっぱり人間でいてくれてよかったな。」
そう心底楽しそうに話すアナキンに反論することに、もはや馬鹿らしさを覚えたオビ=ワン
は自分とアナキンの間にリキを押し込みました。
アナキンは
「ほら、比較してごらんよ。」
などと冗談交じりに言いながら、リキの鼻にキスします。
リキは一瞬びっくりしたようでしたが、すぐに大喜びでアナキンの顔を舐め回し、
オビ=ワンにアナキンが助けを求めるまでなめ続けるのでした――。
楽しいときはアッという間に過ぎ去ります。
気が付くと短い秋の陽は大分西に傾いていました。辺りも段々暗くなり気温も下がってきま
す。
ちょっとした休憩のつもりだったオビ=ワンでしたが、思わぬ楽しい時間のせいで、
長い時間を外で過ごしていました。
こんなところを北の方に見つかろうものならば大変です。自分だけならまだしもリキや
アナキンにまで迷惑がかかってしまうと考えたオビ=ワンはひどく残念に思いながらも、
別れを切り出しました。
「アナキン、私はそろそろおいとまするよ。本当に楽しい時間をありがとう。」
「こんな時間まで、引き止めてしまってこちらこそごめん。でも、また会ってくれる?オビ=
ワン?」
このまま分かれることをひどく残念に思っていたオビ=ワンは当然大きくうなずきました。
女性を出向かせるという考えがそもそもないアナキンは当たり前にこう提案します。
「今度は僕が貴方の部屋を訪ねてもいい?オビ=ワン」
「っっ!!そ、それは・・・」
オビ=ワンは、
あの部屋にアナキンを入れるなんて考えただけでも消えてしまいたくなります。
そんなオビ=ワンの様子を見てアナキンは何か事情があることを察し、
「一週間後、またこの場所で、というのはどうかな?オビ=ワン」
先ほどの発言がなかったかのように、そう提案しました。
オビ=ワンは大きく安堵した様子を隠しきれないまま、大きくうなずき、
二人は一週間後この場所で会うことを約束し、
名残惜しくもそれぞれの帰路に着いたのでした―――。
薄暗く、何もない部屋に帰ったオビ=ワンは今日もリキを招きいれ、抱きしめながら
今日あった信じられないほど楽しい出来事を思い出していました。
あんな美しい人間がこの世にいるなんてオビ=ワンは今でも信じられません。
しかもその人間と楽しく会話し、次に会う約束まで取り付けているのです。
そんな幸せな気持ちのまま座り込んでいたオビ=ワンでしたが、
部屋の戸を叩く音に我に返りました。手早くリキを隠すと返事をします。
「はい、何か御用でしょうか?」
「私だ。オビ=ワン」
外から声がしたかと思うと扉が開けられました。
「父上!お久しぶりです。」
なぜか父親が嫌いなリキが飛び出しやしないかと冷や冷やしながらも、
オビ=ワンは久しぶりに見る父親の姿に喜びを隠し切れません。
しかし、父親の反応は冷ややかなものでした。
「お前は、北の方に言い付かった仕事を蔑ろにしているそうだな。
今日もうろうろと遊びまわっておったそうではないか。
実の子でないお前を世話してくれている北の方にもっと感謝をせねばならんぞ。」
そう重々しく言われます。
「すみません。父上。」
今日の午後、外に出ていた事実を否定することのできなかったオビ=ワンは、
しょんぼりと謝りました。
「今日は罰として食事は抜きだそうだ。よく反省しなさい。
それと、私は他の娘たちのことで手一杯でお前の世話をしてやれん。
お前もこんな暮らしでは辛いこともあるだろう。
いい人が見つかったら結婚してかまわないのだぞ。」
そう部屋を見回し言うと、さっさと部屋を出て行ってしまいました―――。
この話を外でこっそり聞いていたR2は怒り狂いました。
いくら北の方にいろいろと吹き込まれているとはいえ実の娘にひどすぎます。
父が出ていくと同時に部屋に飛び込みました。
父親の台詞に傷つけられ、座り込んだままだったオビ=ワンはびっくりしました。
「R2!!びっくりした。何を怒っているんだ?・・・って今の話を聞いていたのか。
いいんだR2。私は平気だから。父上の元気そうな姿をみれて良かった。
でも、困ったな。
こんなみすぼらしく醜い私をもらってくれる人なんていないだろうから結婚なんて・・・・。」
そう呟いたとき、脳裏にアナキンの顔が浮かびました。
あんな美しい若者と結ばれるのはどんな姫君なのだろう、
と考えたところでさすがにオビ=ワンは悲しくなりました。
いつの間にやらでてきたリキが、慰めるように舐めてくれます。
その胸の痛みを打ち消すように頭をふると立ち上がり、
「さ、もう寝てしまおう。どうせこんな暗くては仕事もできないしね。」
そういうと、薄い布団をひき、慣れたひもじさを抱えたままリキを腕に抱き、
眠りにつくのでした―――。
原作の姫君の不幸レベルもこんなもんです。
そして泣き暮らしています。オビはそんなことはしませんが(苦笑)
そしてまたまた続きます(汗)
この話のオビは細いです。ろくにご飯ももらえないから。
イメージは『トレスポ』のユアンくらいの細さです。薬中レベル。
若さもこんなもんでお願いします。
しかし、アナ坊はタラシオーラがでてるなぁ・・・。本人まじめなんですが。
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